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おもひでぽろぽろ

今から結構真面目に昆虫について書きます。 昆虫が苦手な方は避けて頂いた方が良いかもしれません。夏休みにお子さまと虫捕り予定のお父さまお母さまは参考になると思います。アドバイスも出来ますのでお気軽にお尋ね下さいね。それでは参りましょう。 井上陽水さんの名曲「少年時代」を聞くたびに思い出します。あの頃を─── 祖母と夢中で野原を駆け回った、あの暑い夏を─── 僕が小学校低学年の頃、僕の心の中心にはいつも”昆虫”たちがいました。 図鑑は恐ろしいほど持っていたし、知識も単なる昆虫好きに留まらず、大人向けの専門誌まで読み漁り、当時は本気で昆虫博士になりたいと思っていました。 (正確には昆虫博士という博士号は存在しないのですが) 毎年訪れる夏休み。宿題の定番、読書感想文はいつも「ファーブル昆虫記」という筋金入りの昆虫少年だった僕は、毎日のように捕虫網を持って山へ川へ出向き、その日の成果をばあちゃんに見せるべく、祖母の家へよく遊びに行きました。 自然や動植物が好きという点で、ばあちゃんと僕は気が合い、僕が珍しい昆虫を捕まえて来ると一緒になって喜んでくれる数少ない理解者で、トンボやチョウが家の中で放し飼いになろうとびくともしないタフネスさを持ち、 (むしろ、家の中に蛍を放していたのは、ばあちゃんだった気がします。) 動植物の生態にも詳しかったばあちゃんは、僕が捕まえたい昆虫の生息している場所を見つけるのが上手で、ばあちゃんと言っても当時は50代前半だったので車の運転はもちろん、一緒に走り回って獲物を追い詰める、僕の昆虫採集には欠かせない良きパートナーでもありました。 ばあちゃんはアメシストなどの鉱物を収集していたこともあり、特に美しい昆虫が好きでした。 法隆寺の「玉虫厨子」で有名な、緑色に光り輝く”ヤマトタマムシ” 日本の国蝶、雄の翅の青紫色が美しい”オオムラサキ” 鮮やかな体色が目を惹く”アオヤンマ” 中南米に生息し、兄弟がブラジルへ移民しているばあちゃんだからこそ入手出来た、生きている宝石”モルフォチョウ” このメネラウスモルフォの標本を持っていた僕は小学校でちょっとしたヒーローでした。 モルフォチョウ属は日本に生息していないので生きた個体をこの手で捕まえることは出来ませんでしたが、ヤマトタマムシやオオムラサキ、アオヤンマは生息地を割り出し、足繁く通い、何度か捕らえることが出来て、ばあちゃんと一日中観察していた記憶があります。 そんな昆虫採集マニアの僕たちでも捕獲するどころか、その姿さえなかなかお目にかかれなかった、美しくて貴重な昆虫たちがいました。 北方系の種で群馬県では標高の高い地域でしか見られない”クジャクチョウ” 日没直後の薄暗い時間帯、いわゆる「黄昏時」にしか活動しない、日本で一番美しいとされるトンボ”マルタンヤンマ”の雄 この2種類は絶滅危惧種に指定されるような希少種ではないのですが、産地が局所的で、まとまった個体が発生する場所も少なく、マルタンヤンマに至っては黄昏時30分しか捕獲のチャンスがないため、その姿も一瞬だけ確認できたというくらいで、ずっと僕らの憧れの存在でした。 結局、この2種類の昆虫を間近で見ることなく、僕は中学生、高校生と大人になっていき、思春期のせいか”昆虫好きは恥ずかしい”という認識が生まれました。 そのまま時は流れて現在、僕はクインテットに入社してから随分経ちます。 スタッフのみんなは家族のようなものなので、僕も気付けば昔の知識をフル活用して、「この虫はサシガメと言って、刺されるとめちゃくちゃ痛いから気をつけて!」などマニアックな注意をしたり、店内に昆虫が侵入してくれば、「この虫なに?」と尋ねられたり、 クインテットでは昆虫=茂木の図式が成り立ち、夏になると昔好きだったトンボや珍しい昆虫に出会える緑豊かな敷島公園で仕事が出来ることを嬉しく思うと同時に、昆虫少年だった頃の自分とばあちゃんを思い出します。 昆虫採集をしなくなってからというもの、ばあちゃんとのお出かけはほとんど無く、僕は外孫なので一緒に過ごした時間は元々少なかったのですが、前橋で一人暮らしを始めてからより一層、ばあちゃんが遠い存在になっていたと思います。 そんな中、先日ばあちゃんが亡くなりました。69歳という若さでした。 あまり突然だったので四十九日が過ぎた今でも実感がわかないです。ばあちゃんのあまりの面白さに以前僕のブログに登場してもらったこともありました。 ばあちゃんはブローのモデルさんや僕の初めてのお客さんとしてお店に来てくれたこともあり、クインテットには馴染みがあります。その知らせを聞いたスタッフのみんなが声をかけてくれて、一緒に悲しんでくれて僕もばあちゃんも嬉しかったです。 僕、夏休み何も予定がないのでね。ばあちゃんのお墓参りはもちろんするんですけど、ばあちゃんと一緒に見たかったあの昆虫捕まえに行こうと思っています。 生息地は見つけました。車がなくても電車で行けます。 もう大人ですからね。道具も大人仕様でいきますよ。 『軽合金四折式グラスロッド引抜式4本継50cmナイロン網付 全長400cm』 (よくわかんないんですけど、何か凄そうなんで買ってみます。ちなみに諭吉オーバーです。) 少年の日の大勝負。今年の夏、再び演じたいと思います。 “マルタンヤンマ”雄を捕まえて天国のばあちゃんに見せるために。 (写真を撮ったらキャッチ&リリース。これ、トンボマンの鉄則です。) 以下、Wikipediaより引用 『マルタンヤンマ』 学名 Anaciaeschna martini (Selys, 1897) 和名 マルタンヤンマ □マルタンヤンマ(Anaciaeschna martini)は、蜻蛉目(トンボ目)・ヤンマ科の昆虫である。和名の由来は、フランスのトンボ学者R.Martinに献名された事による。 □成虫 オスは全長65 – 81mm、腹長43 – 57mm、後翅長41 – 47mm、メスは全長72 – 84mm、腹長53 – 63mm、後翅長44 – 50mmであり、同属のトビイロヤンマより一回り大きい。 体色は褐色でオスメスとも未成熟だと、斑紋は黄色。成熟したオスは斑紋と複眼がコバルトブルー、成熟したメスでは斑紋が緑色になる。成熟すると翅の褐色さが増し、特にメスでは基部に顕著である。 □幼虫 体長34 – 38mm □生態 平地から丘陵地の沼沢地に生息する。成虫は夕暮れや早朝に活動し、高速で飛翔する。 □分布 日本(北海道や東北より南の地域だが、東北でも散見される)・台湾・インド